ことば

「さとやま」

四手井綱英氏がなくなられたことについての報道で、「里山」という言葉を造語した、と紹介していた*1。 定義をして使うことにしたのは、そうなのだろうが、それまで無かった語であるというわけではない(もちろん、地名・人名の話ではない)。 里山や雉子の…

旬果

シュンの果物で、旬果らしいが、ジュンカと読みたくなる*1。単独で「旬」だとシュンだが、熟字(「旬○」「○旬」)ではジュンというのが、この字の常用音であろうか。 後記 「旬食」という文字列を「シュンショク」と読む自分に気付く。 *1:レッツキスと歌い…

我慢我慢

「日本で覚えた我慢我慢」というような見出しだけだと、日本で「耐えろ」と教わったと言っているようですが、中身を読むと、「耐えろ」ということよりも、「前半は自重しろ」という教えのように見えます。

「やらせ」の拡張

やらせたわけではなく、自分でやったのまで、「やらせ」と言っているような気がする。

日本語を破壊出来ているか

ルー語だとか、詩人が日本語を破壊する、とか言っているけれど、あんまり破壊されているようには思わない、というようなことを時折言うのだが、ルー語大変換作者: ルー大柴出版社/メーカー: 扶桑社発売日: 2007/07/31メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: …

現代語の活用整理から〈子音語幹・母音語幹〉による説明へ

古語動詞の活用表 - くうざん、本を見るの続きで、子音語幹動詞・母音語幹動詞という説明の有用性を説明したいときの表。 出発 【活用整理】 カ四(書く) ガ四(嗅ぐ) サ四(貸す) タ四(勝つ) ナ四(死ぬ) バ四(飛ぶ) マ四(咬む) ラ四(苅る) ワ四(買う) 上一 下…

かなづかい問題

かなづかい入門―歴史的仮名遣vs現代仮名遣 (平凡社新書)作者: 白石良夫出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2008/06/01メディア: 新書購入: 4人 クリック: 32回この商品を含むブログ (22件) を見るについて少しだけ。著者の「新仮名遣いで古典を」というようなこ…

異音か別の音素かの判定と当事者の意識*1

http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/keita_yamaguchi/20080618/1213772384 こちらの「を」の話を読んで。 柳田征司『室町時代語を通して見た/日本語音韻史』武蔵野書院ISBN:4838601387 では、松山方言のオの音価を次のように記述している。 …

古語動詞の活用表

http://blog.goo.ne.jp/satopyyy/e/c989c719fb2329fa520562e418f7528d こちらを拝読して思い出したこと。 私は、(形式主義者なので?、)活用整理は語形のみで行いたい、と共通教育授業で表明しております。学校文法で習う、江戸時代に行われた古語動詞の整…

ら足すことば3

金沢康隆『俳優の周辺』演劇出版社 昭和31.4.10 歌右衛門が戦前に「ひらがな盛衰記」の千鳥をやったとき「二人の親御に憎まれて」を「憎まられ」と平気で言ってゐたことがあった。見るに見かねて、憎まられるのを覚悟で直してもらったが、口頭伝承の彼等のセ…

和本教室

http://bokyakusanjin.seesaa.net/article/100003313.html こちらを見て気付いたのですが、 『図書』6月号から始まった中野三敏先生の連載「和本教室」には「ワホンカウシツ」と振り仮名が振られているようです*1。 「ケウシツ」でなく「カウシツ」ならば、…

ら足すことば2

http://b.hatena.ne.jp/kuzan/20080325#bookmark-7998286 「あとで用例を探す」としながら放置していたが、 google:行からいでか いくらかあるが、他の五段動詞(ラ行以外の)では、あるのかな。「読まらいでか」はないようで、本を読まずに居られない人は、…

人身事故

下高井戸駅に行くと、人身事故で電車が遅れているという。一時、全線運休していたらしい*1。 「人身事故」は、〈鉄道への飛び込み〉の言い換えになってしまっていて、人の体が損なわれる事故という意味合いは忘れられることがあるようだということを*2、「鉄…

ら足す言葉

右の写真は漢文訓読に現れた「ら足す言葉」。 『訓訳法華経』 大正三年四月十五日発行 著作者 深川観察 発行所 大阪心斎橋通安土町北 加々善 吉田善造書店 赤く塗ったのは私ではなく旧蔵者。助辞にあたる漢字部分を塗っているようだ。

言語感覚

私はこれまで、 人は、よく、「正しくない日本語である」とか、「本来の言い方ではない」とか、「古くて合理的でない日本語である」とか、「権威主義的な日本語である」とか言って指弾するが、これは、自分自身のことばが好きで、それとは異なるものを指摘す…

静清

ニュースを見ていて、「静清バイパス」を「せいしんバイパス」と読んでいるのを聞いて、ちょっと意外の感を持った。 「清」をシンと呼ぶのは、唐宋音、厳密に言えば中世唐宋音だ*1。中国語のng韻尾をンで読む(イやウでなく)、という特徴を持つ。常用の字音…

半藤氏「漱石時代の新語」確認

漱石造語伝説だが、半藤氏のものは、『明治のことば辞典』だけで、漱石以前の用例がおおむね拾える。半藤氏は、『明治のことば辞典』に載っていると言うことが「新語である」と捉えたのであろう。 http://d.hatena.ne.jp/kuzan/20080424/1209051941 に掲げた…

「不可能」と「能くすべからず」

しつこいようですが、今日も漱石造語伝説。 http://d.hatena.ne.jp/kuzan/20080424/1209051941 ここに書いた、半藤氏の文章の前段に、不可能・反射・無意識も「漱石先生が時代の尖端を切って」とか「新語」とか書かれていた。 このうち、「無意識」は、半藤…

漱石造語伝説の大源流「漱石が率先して使った新語」

漱石が造語した、と世間で言われるものの大半は伝説である、ということを申し続けておりますが、続・漱石先生ぞな、もし (文春文庫)作者: 半藤一利出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1996/12メディア: 文庫 クリック: 9回この商品を含むブログ (2件) を見る…

我が世誰そえ 常ならむ

亀井孝氏の仮説、いろは歌は四十八だったかもしれない、というのは、月刊言語の投稿欄「言語空間」(1978.12)で発表されたが、小松英雄『いろはうた』中公新書ISBN:4121005589、「発表されたのは遅いが、ずっと以前からの考え」と記されている。「ずっと以前…

幽霊語

http://d.hatena.ne.jp/kuzan/20080411/1207927302 ここで、この幽霊語は、辞書の世界だけのことだったのか、と書いたが、用例があった。 いにし明和のころ風はけしかりけるとし、枝はふきをられてからのかきりたちからしになりにたり 書いたのは富士谷成章…

江戸の食い倒れ

http://d.hatena.ne.jp/kuzan/20080413/1208104529 の続きです。コメント欄でhigonosukeさんからお教えいただいた、読書家の新技術 (朝日文庫)作者: 呉智英出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: 1987/10メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 13回この商品を含む…

「京の着倒れ、○○の食い倒れ」

呉智英氏の産経新聞連載。 http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/080413/acd0804130409002-n1.htm http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/137246/ 「マスコミよ、通説を疑え」という趣旨はごもっともである。 一番有名なのは「京の着倒れ、江…

幽霊語「たちがらし」

http://d.hatena.ne.jp/k980504/20080411#1207922132 広辞苑以前を知りたいと思いました。 まず、雅言集覧*1にはない。 http://kindai.ndl.go.jp/BIImgFrame.php?JP_NUM=56000205&VOL_NUM=00002&KOMA=13&ITYPE=0 http://www.let.osaka-u.ac.jp/~okajima/PDF/…

これも漱石の造語ではない「肩が凝る」

〈漱石の造語ではない〉シリーズ*1の一環です。漱石を貶めることに目的があるのではなく、なんでも有名人ひとりの成果にしてしまおうという風潮への警鐘のつもりです。 漱石の疼痛、カントの激痛―「頭痛・肩凝り・歯痛」列伝 (講談社現代新書)作者: 横田敏勝…

万愚節

日本国語大辞典は第二版でも「April foolの訳語」としているようだが、これは、All fool's dayの訳語とすべきでしょう。「万聖節」All saint's day の対。 『明治のことば辞典』東京堂isbn:4490102208、明治44年の『模範英和辞典』を載せるが、実際の用例と…

「○○時前○○分」のこと

昨日に続く 「○○時○○分前」の用例は山のようにあるので、いちいち挙げないが、古いところでは、 『明治ニュース事典』の、 間もなく二時十分前再び御馬を早められ、午後三時前染井町なる木戸従三位殿の邸へ臨御ありしに、王子抄紙会社へ行幸〔明治9年4月15日…

羽田発、八時前十分〜♪

7時50分のことを、「8時10分前」ではなく「8時前10分」という具合に言うのは九州の方言である、と言われます。 見坊豪紀『60年代ことばのくずかご』筑摩書房 p183 「文研月報」5月号16シンポジウム「放送のことばと方言」柴田武を引用*1 2時55分のことを…

「不足」

「不足」という言葉から、「不平」「不満」という意味が薄れていったことは、「役不足」の意味変化の話の際、あまり出て来ませんね。「不足を言う」などの「不足」です。 新野直哉氏*1の、 「正用(1)」「役に対する不平不満」 から 「正用(2)」「人に対して…

これも漫画的表現と思っていたが

紙芝居的だったのか。 涙がチョチョ切れる、は戦前、紙芝居のおじさんがしばしば使っていたなつかしいことばだ。こういうことばがいまも電波の世界に生きていることに興味を持つ。 榊原昭二「擬音語・擬態語雑考 コミックを中心として」(岩波文学1981.9) *