江戸の食い倒れ
http://d.hatena.ne.jp/kuzan/20080413/1208104529
の続きです。
コメント欄でhigonosukeさんからお教えいただいた、
- 作者: 呉智英
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大阪はというと、[...]米の集積地であり、米はまた食物でもあるから、食い倒れと言われることもあった。
というのは、滑稽発句類題集の用例を見たかのようでもある。
「江戸の食い倒れ」
「江戸の食い倒れ」を載せる「浪花の風」はこちら。
○諺に、京の着倒れ、江戸の食ひ倒れといふ如く、浪花の地も、京師と同様に衣類をば殊に貯ふる風俗なり。身上相応のものは姑く置て不v論。裏屋住にて纔に夫婦暮しのものにても、衣服は分に過て貯り。日々の盗難訴へにても、右様夫婦暮しにて、日雇稼ぎなどの貧窮ものといへども、衣類の五六品位は盗み取るヽ事平常之事なり。是江戸にて、裏屋住の其日暮しもの抔には決てあるまじき事なり。
「浪花の風」
江戸繁昌記五篇
諺所謂江戸人倒2於食1 (諺ニ所謂ル、江戸人ハ食ニ倒ルト)
http://kindai.ndl.go.jp/BIImgFrame.php?JP_NUM=40007583&VOL_NUM=00003&KOMA=37&ITYPE=0
(「倒於食」に「クライダヲレ」の左傍訓あり)
天保頃。ISBN:4002401006 ISBN:4582802591 , ISBN:4582802761 , ISBN:4582802958
「江戸の〜〜」としては、一昨日引いた、嬉遊笑覧の方が古い。
「大坂の食い倒れ」の古めの例
『譬喩尽』は、天明の序があり、
京は着倒れ 大坂は喰ひ倒れ 堺は建倒れ
ASIN:B000J8BG74
これが、今のところ「大坂」「食い倒れ」の最古例か。
後補
『岩波古語辞典』「京の着倒れ」に引く、『不審紙』は享保頃のものらしい。これが、いまのところ、最古のものと思われる。
「大方は世に言ふ、−、大坂の喰ひ倒れ、堺の建て倒れなるべし」〈不審紙三〉
(後補、ここまで)
『江戸愚俗徒然噺』(未刊随筆百種)第五
京の著だおれといひ、大坂の喰だおれといふ事も、著物と喰物とにあらず、木と杭となり、
は天保頃。
今野信雄『江戸の旅』岩波新書(ISBN:400420349X ISBN:4000091409)は、
柳下亭種員は江戸の呑みだおれ、大坂の食いだおれ、京都の着だおれと並べているが、これは必ずしもそうではない。
として、「浪花の風」を引いているが、柳下亭種員はどこに書いたのだろう。
ほか
『俚言集覧』は、
京の服《キ》たふれ 京の服タフレ信濃のクヒタフレ下総の熬タフレ 又堺のクヒタフレともいふ 又紀州のキダフレ水戸のノミダフレ尾張のクヒダフレ
http://kindai.ndl.go.jp/BIImgFrame.php?JP_NUM=52010836&VOL_NUM=00001&KOMA=374&ITYPE=0
(増)〔浪花の風〕(大坂町奉行久須美祐雋著安政三年起筆)諺に京の着倒れ江戸の食ひ倒れといふ如く浪花の地も京師と同様に衣類をば殊に貯ふる風俗なり。身上相応のものは姑く置て不v論。裏屋住にて纔に夫婦暮しのものにても衣服は分に過て貯へり。日々の盗難訴へにても右様夫婦暮しにて日雇稼ぎなどの貧窮ものといへども、衣類の五六品位は盗み取るるゝ事平常の事なり。
「(増)」以下は明治時代の増補。
なお
ことわざの語史を調べたい時に見たい『俚諺大成』は未見だった*2が、見ると、上記の『俚言集覧』(とその前段階の『諺苑』)・『譬喩尽』のほかに、、本居内遠『俗諺集成』の「なにはのくひたふれ」、蜂屋茂橘『国字分類/諺語』の「大坂のくひ倒れ」と「大坂のたて倒れ、江戸のくひ倒れ」、一荷堂半水『諺 臍の宿替』の「大坂のくひ倒れ」が載っている。
『諺苑』では、「信濃の食い倒れ」しか載っていないようだが、編者の太田全斎は江戸の人。「江戸の食い倒れ」は採集できなかったのだろうか。
一方、近い時代の上方では『譬喩尽』によって、「大坂は喰ひ倒れ」が、採集されている。
後の補
上記、後補のように、享保のころ(50年ほどさかのぼる)と思われる「大坂の食い倒れ」がありそうだ。
*1:「大正時代頃から」という違いもあるが。
*2:普及版のようなものが出てくれないかな、と思っているが、38000円もする。 http://webcatplus-equal.nii.ac.jp/libportal/DocDetail?txt_docid=NCID%3ABN03227562