人名の読み方

狩谷エキ斎の「エキ」の字は、木偏に夜。「これは国字だからエキと読むのは間違い」という説がある。「ヤと読まねばならない」と。

なぜ、国字だったら、諧声符の単独の時の音で読まねばならないのか*1、という疑問はあるが、それはさておき、木偏に夜の字は中国の韻書に見える。右の画像は宋代に作られた『集韻』だが、こうした韻書は、漢詩で同じ韻となる字を纏めるだけでなく、全く同音のものをさらに纏めてある*2。このあたりは皆、漢音エキ、呉音ヤクと読むあたりの字であるが、そこに、ちゃんと木偏に夜の字も入っている。エキサイと読んでよいはずのものである。

「読めない」というには、根拠が必要だ、というお話。もちろん、本人が、「そう読んで欲しくない。こう読んで欲しい」というのであれば話は別だ。


思い出した話。
「己」は「ミとは読めない」と言われるが、慣用久しいし*3、「ミヅカラ」の「ミ」である、と理解することも可能だから、「読めない」と拒絶せずに読んであげましょう。

*1:「液」「腋」「掖」の音ではなく「夜」の音で読まねばならないのか

*2:同音字の集まりを「小韻」という。

*3:また、「己已巳」の捉え方が現在と違っていた時代もある