原稿流出

村上春樹が問題にしたいのは、安原顕個人なのか、それとも出版者側と作者の関係なのか。
前者だったら、これ以上私が考えてもしょうがないが、後者なら、なお気になるところだ。

著作者が出版者に原稿を渡す。これはどういう行為なのだろう。依頼原稿と、持ち込み原稿では違うだろう*1

掲載することが前提の依頼原稿の場合、出版権を渡しているのだろう。原稿料が出る場合も、著作権を買うのではなく、また原稿そのものを買うのではなく、出版権(特記なければ三年分)を買っているはず。
だから、原稿そのものの権利は当然著作者側が持っているはずだ。作者に返すか、返さないようにしても出版者は厳重に保管すべきだ、ということではないのか*2


ややこしいのは、持ち込み原稿というか、「見てもらう」原稿。出版する価値あり、と決まった場合は上記に準ずると思う。これはダメだ、となった場合が問題だ。著作者側は「写し」を持ってはいるだろうが、やはり返すのが筋だろう。

出版に到らなかった原稿が古書店に流出する、というのは、私信の流出にも通ずるのではないか。

*1:賞への投稿などの場合には、原稿は返却しないというような規定があるだろうから、ここでは無関係だ。

*2:「すでに退社しており云々」では理由にならぬということ。