「い」と「ひ」

うしのつのもじ」ではないが、「い」と「ひ」が似た字体になることがある。大学生の頃、部室にはノートがあって、それにいろんな人が好き勝手なことを書き付けていた。そこで、ある人の「い」と、別の人の「ひ」が殆んど同じ形だったのに気付いたことがあった。うまく書けないが右図のような感じのもの。

それを思い出したのは、コピーの紙束を整理していて出てきたものを見たから。

京都に住み始めた十七年前のころ、三条の京都文化博物館*では無声映画を上映していることがあった。たまたま見たのが、「落第はしたけれど」。笠智衆が出る小津映画だ。そのとき貰った紙が二枚あり、一枚は粗筋などの説明で、もう一枚は字幕部分を全部翻字してある*1。それをながめていると、

試験場へ入ると 一つも教へて 呉れなひんだ
とか
教はった僕が 及第するなんて そんな法はなひよ
などと書いてある。この「ない」と書くべきところを「なひ」と書いてあるのを見て、仮名遣のまちがいだろうか、と思ったのだが、
ひろひろ教へて
とか、
ひひんだから
とか
ひひぜ
などとあるのを見ると、「い」を「ひ」と誤認したと見るべきかと思った。
残念ながらこの翻字は、映画を見終わった後に見たので、実際の字幕がどうだったのか、覚えていない。
「いろいろ」としてある「い」や、「言ひ」の「ひ」の字体と見較べたいところだが。

*1:この資料、纏められていないのかな。上映された全映画の字幕があれば、それなりに面白かろう。