広告文「読んでから見る」大正のメディアミックス

杜翁の作は読む度毎に新らし味を増す、殊に『復活』に到っては其思想の集大成とも云ふべきもの、現代の諸問題に触れて之を詳析し批判する恰も利刃を以て菜根を切るが如く明解淋漓たり、加ふるに赤裸々なる現代の生活を少しも潤色せずに其儘に活描し来るや紙上に人の呼吸を聞き人の脈搏を感ずるが如し、近く脚本として其新劇壇に上演せらるゝ風説あるが、如何に脚色せらるゝや先づ其原小説を読んで之を比較するは亦一の興味ならん
トルストイ翁の大傑作
復活 菊判洋裝 全二册
 前編 金壱円五拾銭
 後編 金壱円八拾銭

ついでに。

最高の文学は所謂文学好きの小説読者の爲めにのみ作られたるに非ず、ド氏の作、殊に此の『罪と罰』の如きは他の科学者、哲学者、心理学者、倫理学者、宗教家、教育家、法律家、司法官、警察監獄吏、社会改良家等の精読を要望するもの、必ずや偉なる哲学、大いなる経典に接すると同じ感動及び教訓を受くる事あらん
露国ドストエフスキー作 罪と罰 前篇
 四六版五五〇余頁ポイント印刷
 正価金壱円四拾銭

『新公論』大正三年四月号 裏広告