文春文庫の『映画字幕(スーパー)の作り方教えます』ISBN:4167484013となく購入したときには、これが、ハヤカワ文庫NFの『映画字幕(スーパー)五十年』ISBN:4150501319うとは思わなかった。これで字幕関係の本が二冊手許に来た、と思っただけだった。気付いたのは、本棚に入れるときだった。読んでなかったからこういうことになる。同じ本を二冊買ってしまうのとは違うから、まあ、よいのだが。今、この本を見ると、カバー袖に「「映画字幕(スーパー)五十年」で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞」とは書いてあるのだが、早川書房とは書いておらず気付かなかったのだ。

この文庫は、清水俊二氏没後の刊行。亡くなったのは、1988.5.22。「あとがき」には「昭和六十三年五月」とある。文字通りの遺著と言えよう。「あとがき」には、「解説を書いてくださった長部日出雄」とあるが、その後に、

本書の解説は長部日出雄氏に依頼してあったが、著者の死後、長部氏の提案により、著者を最もよく知る戸田奈津子氏に変更になった。(編集部)
とある。そういえば、戸田奈津子『字幕の中に人生』白水社 ISBN:4560032971、たまたま持っていて、これに清水氏も出てくる*1

さて、『映画字幕(スーパー)の作り方教えます』には、「常用漢字にない略字も使います」という章があって、「撃」の「車」と「山」を縦に足したような字体(「撃」の正字から殳と手を取ったもの)から話を始めて、「卆」などの字体を挙げる。「職」の「耳云」、「門」「間」の略字、「師」の中国簡体字風のもの(左側が片仮名の「リ」のような)、「喜」の「七七七」(「七十七」ではなく)に加えて、「寐」を「寝」の略字としている。
これは本来別字で、「寐」はビ・ミと読むもの、「寝」は勿論シンと読むものなのだが、この二つを異体字扱いにするの、まあ、よくある誤解である。同訓の別字が異体字づらしているのは、「糟」「粕」もある。

*1:「字幕という日本語」という章があるのだが、これは「字幕」という日本語を考証したものではなかった。