言い間違い・麦粒腫

「エエジャナイカ」で、「ものもらい」のことを「もらいもの」と言っている眼科医の話が出ている*。言った後で、「めばちこ」と言い直したそうだから、もともと関西の人なのかな。
私は、福岡の出で「目イボ」を使う。「メボ」*1を、再解釈した語形と説かれるが、「目イボ」が先でそこから、「メボ」が出来たとも考えられる。ともあれ、以前、子供の目にそれが出来たときに、子供を眼科に連れていったのだが、何の気なしに行ったので、その地域で「ものもらい」のことを何と呼んでいるのかを調べることなしに行ったのだ。
受付で「どうしました」と聞かれ、つい「目イボ」と言ってしまい慌てた。慌てたせいか「ものもらい」が出て来ず、「バクリューシュ」が出てきた*2。受付の人は「はいはい」と、分かったような分からないような返事だった。診察の際に、また「どうしました」と聞かれたので、やはり受付の人は分からなかったのかな、と思った。眼科の受付なのだから「麦粒腫」ぐらいは知っていそうなものだが、患者がそのようなことを言うのが聞き取れなかった原因かとも思う*3

もう一つ思い出した。「モノモライを広辞苑で引いたのだけれど、そこには目に出来るデキモノだと書いてなかったから、これは標準語ではないのですか」と聞かれたことがある。標準語云々は別にして、まさか広辞苑が載せてないはずがないだろうと引いてみると(三版か四版のころ)、「(2)麦粒腫の俗称」とあるのを見落としたのであろうと思われた。「語釈に意味の分からない言葉が使われていたら、それの意味も調べないと」と注意したことであった。
(1)の意味は、「食物を人にもらって生活する者」なのだが、「麦粒腫」が、「ものもらい」「目陪堂」「目勧進」などと呼ばれるのは、その民間治療による命名であると説かれる。つまり、麦粒腫が出来たら、余所の家から飯を貰って来る必要がある、という治療法である。

しかし、逆かもしれない、とも思う。つまり、「ものもらい」などという名前があるからそういう治療法が考えられる、と。命名としては、単純に、目にあるべきでないものを余所からもらってきてしまった、というような。
それでは説けない、という説明が欲しいところなのだ。


探してみると、ロート製薬に、麦粒腫の方言分布についてのページがありました*

【補】
方言分布の話を面白く感じる人、また逆に、方言なんて雑談のネタや地方の好事家のもので知的好奇心はそそられないという人に、
  徳川宗賢編『日本の方言地図』中公新書533 ISBN:4121005333
をお勧めいたします。

web上では、高橋顕志氏による、西日本を中心とした言語地図*が、あります。

国立国語研究所の、方言研究の部屋*では、さまざまなデータや、方言関係ページへのリンクがあります。
方言地図作製計画*というのも、ありました。

*1:「目ぼいとう」の略とされる。「目ぼいとう」は「目+ほいとう」で、「ほいとう」は「陪堂」で、乞食(ものもらい)の意味がある。

*2:「おひめさん」「いんのくそ」も思い出したが、別に方言の話をしているのではないから言うのはやめた。

*3:ある種の医療機関では、患者が病気のことを全く知らないものだ、と思いこんでいるところがあるように思う。