論文を読む

築島裕博士傘寿記念国語学論集』ISBN:4762935263、屋名池誠「現代日本語の字音読み取りの機構を論じ、「漢字音の一元化」に及ぶ」を読む。題名を見てからの予想通り、「字音の単線化」と私に言ってきたこととほぼ同じことを詳しく論じたものであった。
私が「単線化」と読んだのは、引き込み線や部分的に複線のところがあるからなのだが、屋名池氏は、基本線を〈無標の字音〉とし、引き込み線を〈有標語彙〉としている。
同書の、坂梨隆三「脚本のことば─『東京物語』を資料として─」も読む。尾道が舞台の映画で、笠智衆が「じゃ」ではなく「だ」という一場面についてなど。
武藤康史「辞典を引いて読む、小津脚本。」(「東京人」二〇〇三年10月)も引用してある。

笠智衆は熊本出身だから、「じゃ」ではなく「だ」が地の言葉だということだが、熊本市のみならず玉名もそうだったか、と思い、『九州方言の基礎的研究』ISBN:4759907955、微妙なところだ。荒尾はジャの地域だ。
『九州方言の基礎的研究』を見たのは、『日本言語地図』に適当な地図がないから。46図の「〈いい天気〉だ」がそうかと思えるが、これでは九州地方は、「ダ・ジャ・ヤ」を言わない地域になってしまっている。「よか天気バイ」の「バイ」は「ダ・ジャ・ヤ」に相当する部分ではないから。

そういえば、子どもの見ているテレビ漫画で、「焼きたて!!ジャぱん」というのがある。これの主人公が「パンなんじゃ」というような話し方をする。どこの出身と言うことかと思うと、新潟であるという。新潟は、ダの地域であると思っていたが、牛山初男『東西方言の境界』(webcatplus)で見ると、ダとジャを混用する地域もあるようだ。