学者と歌手

前にどこかで書いた気がするけれども、もう一度。


論文がシングルで、著書がアルバム。学会発表はステージ、ただしコンサートとかではなく、歌謠ステージのようなもの。コンサートに当たるのは集中講義だろう。
普段の講義が、レギュラーのDJ番組……ではなさそう。


それはさておき、論文や著書がCDで、口頭発表がステージだということ。口頭発表には、ナマ感が欲しいところ。完全原稿を作ってそれを読み上げるだけでは「口パク」と同じで詰まらない。一方、大まかに話すことを決めておいて、あとはその場の勢いで話す、というのは、熟練が必要。熟練していれば、アカペラでもギター一本でも聞かせることが出来るが、未熟なうちは、カッチリとカラオケを作っておかないといけないだろう。準備をしていて、つい直前まで「ここの音をもう少しうまくしないと」などと、細部の詰めをやってしまうのだが、細部よりも全体のつながりにも目を配ってカラオケを作っておかないと、ステージではおろおろしてしまうことになる。

言わば、カラオケはプリントと手順書かな。もちろん、パワーポイントというかスクリーンの人もあるだろうけれど。


もちろん、完全原稿を作り、それを頭に入れ、読み上げている風でなく、生き生きと話す、ということもあるわけだが、これは、新しいことを発表する、という学会発表では、なかなか難しそうだ。


発表要旨集が論文スタイルになっていて、それを読みあげる人もいる。句読点しかない文章が、文章作成者によって発音されることによって分かりりやすくなる、ということが、もっとあってよさそうなのに、それは意外に少ない*1


そういえばマイクの使い方が下手な人も結構いる。私も、時折、緊張興奮してしまい、バリバリ鳴らしてしまうこともあるが、異音がしたら気付いてマイクを口から遠ざける。発表者の耳に届いているスピーカの音と、聴衆の耳に聞こえるスピーカー音が違うこともあるだろうけれど、マイクを使う人は、音が割れたりするほど大声で話したり息を吹き込んだりすることのないように心がけて欲しい。私はびっくりしがちなので、マイクがボッと大きな音を立てるとそこで思考が中断して気が散ってしまい、話に集中できないのだ*2

*1:そう言えば、そういうスタイルの発表をして、それをすぐさま論文にするのはよいが、発表の時の質疑応答が生かされていないのもあって、そういうのは「いかがなものか」と思う。

*2:ついでに言うと、ウケを狙った用例には心がざわついてしまい、頭が本題から離れてしまうことがある。これは、気が散りやすい私が悪いのだろうが、そういう聴衆も居る、ということは知っておいていただければありがたい。