中国

6月1日(星期一)

 北門の近くの報刊亭で陝西省地図冊(5.8元)を買う。
 解放路餃子館の下に本屋が有ったのでそこで時間を潰す。なかなか面白い本屋だったが緊縮財政の折から任道斌『方以智年譜』(1.1元)と周斌武『漢語音韻学史略』(1.15元)を買ったのみ。

6月3日(星期三)

 関根庄一『翼は心につけて』読了。

6月10日(星期三)

 吉本ばなな『うたかた/サンクチュアリ』読了。

6月11日(星期四)

 夜ベッドの中で吉本ばなな『白河夜舟』読了。全然眠くないので赤川次郎『百年目の同窓会』読了。三時ごろ就寝。

6月12日(星期五)

 夕方、裏門の方へ本を買いに行く。『二十二子』29元。『中国名勝図冊』4元

6月14日(星期日)

 ようやく『中国の歴史』上を読了。

6月15日(星期一)

 帰り、師範大の本屋へ行き、いろいろ買う。『四書集注』『春秋三伝』『詩経集伝』『書経集伝』『礼記集説』『宋元平話集』『語言学綱要』『中国比較文学』。午後から、自転車で町に本屋を捜しに行く。碑林の東に『十三経註疏』を置いてある本屋が有って、『小学史』『方言与文化』『中国古代韻書』『関于文字改革的反思』を買った。これはいい本屋を見付けた、と喜んでいたが、古旧書店に行ってみたら、今までの苦労は何だったのだろう、と云う気がしてきた。みんな此にあるではないか。『通志』もある、『玉海』もある。ただ『通志』は二三〇元ほどして、ちと高すぎるので、『通志略』を買うことにした。18元。こんな選択が可能なほど本が沢山有るのだ。うれしい、しかし金が足りない。索引付きの『集韻』も10元で買った。

6月16日(星期二)

 帰りに図書館に寄ってみる。カードを引くと結構有りそうである。李新魁『漢語等韻学』など、なんとか借りられるようにしたいものだ。

6月17日(星期三)

 町に行き、本屋に行って『玉海』を買う。102元。いとうれし。『説文通訓定声』『説文繋伝』。

6月23日(星期二)

 宝鶏は蘇東坡が居た所の様なので彼の詩が見たくなり『十八家詩抄』を買う。16.5元。それらしいのは1首しか見付からなかった。

 題宝鶏県斯飛閣 蘇軾
西南帰路遠蕭条 倚檻魂飛不可招 野闊牛羊同雁鶩 天長草樹接雲宵
昏昏水氣浮山麓 泛泛春風弄麦苗 誰使愛官経去国 此身無計老漁樵

6月25日(星期四)

今日は一日、宝鶏方面の歴史調べ。唐書の韓愈伝に載せられた韓愈の仏教批判は面白い。言っていることがまるで日本の国学者の様だ。仏教が来てから中国の帝の寿命が短くなった、というのである。

6月26日(星期五)

宝鶏へ。

6月27日(星期六)

 8時にタクシーで出発。法門寺に向う。まず南下して渭水を渡り、東へ。宝鶏県で左折して北上。道が悪い。かなりな上り坂で舗装していない。鳳翔県の町中を通る時、「東湖」の標識が見える。再び東へ。岐山県を通過する時ちらりと「宋太平塔」と思われる塔が見える。北の方には周公廟がある筈である。
 道路の上で麦わらを干している。農民たちは車が通る直前まで、鍬のようなもので麦わらを地面から掬っては放り投げ、という具合に、麦わらを乾かしている。車がその上を通ることは差し支えないようだ。アスファルトの上が乾きやすいことの方が重要なのだろう。車の方も慣れたもので、かなり分厚く積み上げられた所にもスピードを落すこと無く突っ込んで行く。
 扶鳳県で左折北上。やがて塔が見えてくる。10時半到着。歩いて行く途中、話に聞いた仏門賓館がある。周原特別展観というのもやっているが、見る時間はない。ここから北に暫く行くと、周原博物館もあるのだが、そんな暇も無い。慌ただしい旅である。寺の中に入り本殿を見るが、金ピカの仏たち。ここは数年前まで塔だけが残っていたのだが、その塔が倒れたことによって発掘が始まり、大発見となったので、新しい建物ばかりなのだ。塔の下の地下宮に展示してある仏像は発掘されたもので日本人好みのしぶい仏像である。仏舎利は指の骨だと言うのにとても太い。しかも中が空洞だ。
 湯峪温泉に行く。景色が良い。玄宗皇帝もここに来たようで詩が彫ってあった。

幸鳳泉湯 玄宗
西狩観周俗 南山歴漢宮 荐鮮知路近 省斂覚年豊 陰谷含神爨 湯泉養聖功
益齢仙井合 愈疾醴源通 不重鳴岐鳳 誰矜陳宝雄 願将無限澤 沾沐衆心同
 ガイドブックによれば老子関係のものなどが有るようだ。
 秋風五丈原である。五丈原は階段が設けてあり、かなりの高台である。窰洞が有ったので入ってみると、公衆便所と化していた。あえぎながらも漸く頂上にたどり着くと武侯祠があった。展覧室では諸葛孔明の北伐の様子が説明してあった。奥に行くと、いろんな石碑が転がしてあって、陸游の「書憤詩」(よく怒る人だ)や、杜甫の詠懐古跡五首の内、孔明の像、関羽の像など沢山有った。岳飛の書いた出師表がある筈だがと、見ていると、売店の奧にあった。拓本ではなく印刷してあるやつを20元で買う。「宝鶏勝迹楹聯詩選」3.6元。
落ちてきた星、というのも壁に塗りこめて示してあった。「落星」という地名まであるのだから大したものである。
書憤 陸游
早歳那知世事艱 中原北望気如山 楼船夜雪瓜州渡 鉄馬秋風大散関
塞上長城空自許 鏡中衰鬢已先斑 出師一表真名世 千載誰堪伯仲間
 太公望の釣魚台に行く。大漢和辞典では「釣魚台」の項では太公望のは山東省に有る、と書いてあるのだが、磻渓を引くと、ちゃんと、ここだとしてある。史記正義に水経注を引いて、「磻渓中有泉、謂之茲泉、泉水潭積自成淵渚即太公釣処」とあるのはここである。入場券には「姜子牙釣魚台」とある。水経注に「両膝遺跡猶存」とあるのを今でも残している。面白いものだ。ものすごく太い足である。

6月28日(星期日)

 ワゴン車に乗って8時に大散関に向けて出発。運転手も知らない様子で、10数キロで着く筈なのに、20キロほど走っても見当らず、道行く人に聞くと、行き過ぎたことがわかる。戻ってみると、岩壁に「古大散関」と民国25年に刻したものが有るだけの所であった。川の流れはきれいである。道の横を成都への鉄道が走っていると言うことは、やはりこの道が関所になるだけのことはある、といえようか。此處を通るしか無いのだ。この先に「蜀道難」がある訳だ。
 そこから引き返して、金台観に行く。入口で紙銭を売っていた。高台に有り、町中がよく見える。博物館は土産物のような民芸品が有っただけだ。土産物屋では「周秦漢唐瓦当拓片」の写真を集めた『石鼓』という雑誌を買う。2.2元。

6月29日(星期一)

帰りに本屋に寄る。