♥収穫♥

四日のこと。吉田奈良丸講演『大和桜義士の面影』前編・後編が揃って、三冊500円のところにあったので、拾い上げました。大正九年のものです。開いてみると♥の文字やそれのひっくり返ったもの(以下「♠」)が目を引きました。本文冒頭を見ると、「♥と♠の間にある語句は地、詞とも何れも節」ということで、これが講談本ではなく、浪曲の本であることが分かります。
吉田奈良丸を調べますと、このページ、二代目とのこと。昭和42年まで生きてらしたそうです。
大阪関西速記社主 竹園丸山平次郎*1のはしがきが下巻巻頭にありますが、「予の筆に成れるは丈が語れる言葉の写真のみ」で、

あな惜しや妙《たえ》に聞こえし音《ね》も節も
  速記文字《みみずもじ》にはうつらざりけり
だそうです。


同じく三冊500円の場所で。袖珍文庫*立川文庫*と思って見ると、『伊賀越復讐実記』は仇討文庫というもの。明治44年、尚文館(東京)。露伴の序あり*2


同じく三冊500円のうち。『国民之友』なんてメジャーなものは買わなくてもよいか、と思ったが冊数調整のために買った。175号(M25.12.13)。帰ってから眺めていると、中から「日出新聞附録」という一枚(両面)が出てきた。菊倍というよりA4という感じ。明治廿六年八月十二日 第二千五百廿三号。滋賀県のことばかり書いてある。
「日出新聞」は京都新聞の前身であるようだ*。この「附録」は、滋賀県のニュースを載せたものなのだろう。京都新聞滋賀県版という感じ。
「単衣」に「しとへ」の振り仮名が、「自首」に「じゝう」(ジシュウ)の振り仮名がついている。


同じく三冊500円から。『縁結当福引《ゑんむすびあたるふくびき》』は、明治22.1.1の「ささ浪新聞第二百九号附録」。大津上京町の共同新聞社で発行ということで、明治期の関西方言的なものが紛れていないかと思ったが、まったくの江戸滑稽本風ことば。デゲスの幇間、「申すだ」の下男。中身は、よい男をわが者とせんとする女たちの苦心譚に始まって、井上章一『美人論』ISBN:4022640952な、嫁選びの話に終わる。


これまた三冊500円。笹幾太郎『お色気事典 男と女の隠語』日本情報センター 昭和46.5.20発行。これがwebcatでも、NDL-OPACでも、bk1でも、東京都立でも、早稲田でも、j-crossの横断検索でもヒットしない。ただし、ググる古書店にひっかかる。
新書判p194+「全国お色気民謡」(替え歌、ページ打たず)。定価350円。編者の笹幾太郎は「都々逸 デカンショ節の研究家で即席替歌を作ることに定評がある」由。「笹書房」の文字も見え、日本情報センターは「特別発売」。「イラスト・ツルタ耕二」だそうな。挟み込みで、同著者の「お色気歌集(替歌集)」の広告もある。著者名でググると同センターから『ポルノ事典』1974、『ポルノ歌集』1974も出しているようだ。
中野栄三氏の本あたり(bk1)と較べたいところ*3

*1:『ことばの写真法』M18の著者ですね。

*2:菊池真一氏の載せる仇討文庫第四編『天下茶屋敵討実記』に載せる序*と同じで、これは「仇討文庫」全体の序というわけである。

*3:『陰名語彙』ISBN:4874490867