「不足」

「不足」という言葉から、「不平」「不満」という意味が薄れていったことは、「役不足」の意味変化の話の際、あまり出て来ませんね。

「不足を言う」などの「不足」です。


新野直哉氏*1の、

  • 「正用(1)」「役に対する不平不満」

から

  • 「正用(2)」「人に対して役の方が不足していること」

への変化の方に関わることではありますが*2


  • 「正用(1)」「役に対しての不足(不満)」
  • 「誤用」 「役に対して不足(たりない)……力量などが」

というのが寧ろ似ていて、

  • 「正用(2)」「役が不足」

のほうが仲間はずれに見えるのが面白い。


なお、現在、「不足を言う」という言い方をしないわけではないようですが、「○○不足を言う」で、「○○に対する不平を言う」という意味になることはなさそうな気がします。

*1:http://db3.ninjal.ac.jp/SJL/view.php?h_id=1750260380

*2:新野氏は、古くは「役不足を言う」の形が多いことも指摘しています。「不足を言う」という言い方の広がりを知りたいところですが。なお、「つら不足」は「役不足」と、ほぼ同義のようです。