昨日、頭痛気味でぼんやりした状態で、テレビを眺めていたら、ドラマで「『すまじきものは宮仕え』って言うじゃないか」と言っていた。「言わん言わん」と突っ込んだが、ググって見ると、沢山ありますね。意図的に(洒落で)書いている人もありますが、「枕草子にある」と書いている人もある。枕には、「すさまじきもの」の条はあってもその中に「宮仕え」はなく、「すまじきものは宮仕え」という言葉もありません*1

「すまじき……」は、「菅原伝授手習鑑」の寺子屋の段にあるのが始まり、とweb上では見えますが()、『日本国語大辞典』によれば、幸若舞の信太()にあるとのこと。

あらあじきなや 世の中にすまじきものはみやづかえ われ奉公の身ならずは かかる憂き目にはよもあわじ むかしは相馬につかえ申し このきみを主君と仰ぎしそのときは 月とも日とも思わずや さんがくよりも高き恩 芝蘭よりもこうばしく つきそいまわり申せしが いつぞのほどにひきかえて うつればかわる身のうさは わがてにかけてしずめなば くさのかげにて相馬殿 さこそ憎しとおぼすらん
「宮」は、朝廷をさしているのではなく単に雇われの身分であることのようで、サラリーマン・ブルースにも歌われるのは、その流れにあるわけです。

私がこの言葉を初めて意識したのは、確か小学六年ぐらいの頃に、クイズ番組で聞いた「サラリーマンすまじきものは……。したに続く言葉は?」という問題によってであった*2。川柳のようだがどうも落ち着かない、また「宮仕え」だったら公務員じゃないのか、と思ったのだが、厳密なことを言ったら、宮内庁の職員だけが「宮仕え」になってしまう。

*1:すくなくとも現存本では。とはいえ、虚構新聞 「萌え」の起源は平安年間? 『枕草子』から新たな記述発見みたいなことはないと思います。

*2:この頃でないかと思うのは、ベルトクイズQ&Qだったような気がするからであり、その頃よく見ていたからだ。