悠揚

たまたま、報道ステーションで、「悠揚を迫らない」(あるいは「悠揚を迫らぬ」)という字幕を見た。発言者(静岡県知事だったか)は、「悠揚迫らない」(あるいは「悠揚迫らぬ」)と言っているようだったが。


さて、この「悠揚迫らぬ」ということば、結構面白い。「悠揚にして迫らぬ」「悠揚として迫らぬ」ということだろうと思うのだが、「悠揚不迫」という句は漢籍に見えないようだ*1

日本国語大辞典で「悠揚迫らず」は、芳賀矢一「国民性十論」*から用例をあげている。


「悠揚不迫」、矢野龍渓「安田善治郎伝」*にあるのは見つけた。asin:4122006562
見出しが「悠揚不迫」で、本文は「悠揚迫らざる」。

漢籍に見えない漢語といえば

先日書いた、日本のための漢字辞典に、林大監修『現代漢語例解辞典』小学館、1992年isbn:4095010916いた。JIS漢字の第二水準まで、幽霊漢字といわれるものも収録したのが特色だった。字形の暗合と見られるものしかあがっていないものもあったが(「碵」の「つみいし」*2など)。

しかし我々は、そのような日本漢字典を理想に描きつつも、一方では学校での漢文の学習にも配慮し、ようやくこの辞典の形をなすに至った。

これが新潮との違いですね。漢和辞典は高校で売らないと普通は売れないわけです。新潮社は、もともと、国語の教科書は出してないですしね。

今や

小学館尚学図書も国語教科書を出してないのですね。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/mokuroku/19/koutou/1kokugo.htm
角川は出さなくなった、という話は聞いたような気がしますが。

*1:「悠揚不逼」でも。

*2:「つみいし」は「磌」の訓。