想い出の街
駅の書店で、
音のない記憶 ろうあの写真家 井上孝治 (角川ソフィア文庫)
- 作者: 黒岩比佐子
- 出版社/メーカー: 角川学芸出版
- 発売日: 2009/05/23
- メディア: 文庫
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読み始めると止らない。まず、宇美町が出て来たのにも驚いた。「萬代」という酒の名を見たら、頭の中には萬代のCMソングが流れる。
酒を飲むなら萬代だ
みんなのお酒、萬代だ
うちは代々萬代だ。
めでたいお酒萬代だ
・・・うちーもね
宇美町は、私が長く住んだ町の隣町で、自転車で遊びに行ったりもしたところだ。宇美八幡に行った時に、萬代があるのも見た。私が住んでいたのはp.33にもp.199にも出て来る町で、p.33に書いてある「電車」は「汽車」の間違いだろう。国鉄勝田線である。私が大学院生の時に廃線になったが、電化されたことはない。福岡の人は、電車であっても国鉄であればキシャというから、それによる誤解だろうか。
春日原も私にとって親しい街である。これも隣の大野城市に住んだのだが、利用駅は春日原駅であり、買い物も春日原駅近くでしていた。ちょうど沖縄が返還された頃であり、本書中に出て来る春日原ベースは返還前のことだった*1。井上写真店も存在していたはずの時期だが、記憶にはない。まあ、春日原駅で記憶にあるのは、やりうどんだけなのだが。
そんな、親しさも感じつつ読んでいったわけだが、それを抜きにしても読ませられる。数社から出版を斷わられたというのが意外である。多分読まなかったのだろう。少なくとも9章〜11章を読んでないのだろう。
しかし、ちゃんと見極める人が居て出版に到り、読めるようになってよかった。
私も読んでよかった。
私の父親が写真の現像や燒き付けをしていたのを思い出した。赤いランプと酸っぱい匂いの記憶だ。
表紙の写真は新天町か。
「ふたりの、みんなの、新天町、ヤーッ」
写真集も買いたくなった。
私が福岡を離れたのは、ちょうど黒岩比佐子さんが福岡にいらした頃なんだな。
あと、福岡人から見て、ちょっと気になったのが、筑紫郡に「つくし」のルビがついていること(p.28)。ご家族がそう仰しゃってたのかも知れませんが、公的には「ちくしグン」です。それから「山笠」も公式には「やまがさ」ではなく(p.122)、「やまかさ」です。
『広辞林』を2年で読破、という記録があるのも、よかった。
読んでよかった。
*1:ベースについてはhttp://d.hatena.ne.jp/kuzan/20071118/1195346929に書いた。