本『日本語学研究事典』

先日も書いたが、改めて『日本語学研究事典』ASIN:4625603064。旧版の『国語学研究事典』ASIN:4625400015ある。今日は、資料編を中心に眺めてみた。

思った以上に、旧版の使い回しが多いのが気になった。「序」にある

本事典の編集にあたっては、『国語学研究事典』刊行から三十年間の研究を明確に反映させたが、一方でほとんど進展のみられなかった分野もあるので、その項目については執筆者の了解を得て、前編をそのまま掲載させていただいたものがある。ただし、参考文献については編者が文献を追加した。

が、額面どおりには受け取れない気がする。特に、文学関係資料の項目はそのままの採用が多いように思う。近代文学のところなど、とくに言語的側面について書いてあるわけではないものなどは、そっくり30年前のものを載せるよりは、むしろ削除してしまったほうがよかったのではないかとも思う。


また、参考文献の追加も不十分だ。旧版以降に、活字化されたり影印が出たりしたもので、載せられていないものも多い。例えば「名語記」「古事談*1「東雅」「志不可起」「雑字類編」「倭訓栞」「歌袋」「和漢三才図会」「古言清濁考」「貞丈雑記」「難波鉦」などなど。


なぜ、「この人にはこの項目だけしか?」と思うものも多い。たとえば佐藤貴裕さんには、「忌詞」「女房ことば」「廓ことば」「奴ことば」「雅言考」「俗語考」「雅言通載抄」「男重宝記」「女重宝記」「鄙通辞」だけでなく、「節用集(近世)」「書言字考」「雅俗幼学新書」も書いて欲しかったし、辛島美絵さんには「仮名文書」だけでなく「日蓮遺文」も、櫻井豪人さんには洋学資料をもっと書いてもらいたかった。たとえば、です。



自分も参加した本で、購入を斡旋したりもしたので、心苦しいので、よかった点を書いておこう。先日も書いたように、新規項目には面白いものがある。特に、近代辞典の、

語彙*,境田稔信
ことばのはやし*,境田稔信
ことばの泉*,境田稔信
辞林*,境田稔信
大辞典*,境田稔信
大日本国語辞典*,武藤康史
辞苑*,武藤康史

このあたりはウリですね。ただ、パンフには載っていた、「新語辞典」「モダン語辞典」「外来語辞典」が、載らなかったのは残念。


中国辞書は、ほぼ全面的に書き改められている。資料編以外では、方言のところも、多く書き換えられている。




気づいた誤記

  • p1009下段3行目 高山倫明→江口泰生

*1:続古事談」のところには書いてあるのに。