かけあし四天王寺

返事せねばならぬメールなどを処理した後、電車を乗り継いで四天王寺に足を運ぶ。着いたのは16:15ごろ。それほど時間もないしお金もないので、和本らしいところを中心に見て行く。

粟津義圭の『帳中五十座法談』は巻上のみ200円。

あまり御恩がありがたさに、舌の動く間は、御礼報謝の称名を励ますると言《まう》し上られたれば、上人御落涙遊ばされ 多年給事の功が見えたと仰せられ、大きに御満足なされたとある。急にはげむも快し、正行増進のゆへに諺に長者不飽富と云ことがあって、譬へば今日を暮らしかねる貧乏人は、何ほどかせいでもせんぐりに後へ引かさるるに依て、少々貰《まうけ》ても皆人の手にわたさねばならぬ。其れでは同じことがはりあひがない。又長者の身は、金銀ありあまるうへに、猶商ひをしてまふけるは、心に張合があって面白さが格別、貧乏人のかせぐとは大きな違ひぢゃ。
(十三〜十四丁、原文は片仮名。仮名遣い等、原文のままにあらず)

というような文体の、所謂「真宗談義本」。

他に、『唐詩選解』の巻中(五律・七律)をやはり200円。

 五言律は七言律よりかたいゆへ作りよい方ぢゃ。皆知っている通り、破題頷聯頸聯結句と云ことがある頷聯では上の句を承て云ひ頷聯では轉じてゆくことぢゃ さりながら始終の命脈がつづかねばならぬ 今の詩人の詩を見るに唐詩などの中から一二字づつ切って作るゆへ間にはよい句もあれども、命脈がつづかぬゆへやくにたゝぬ。是を合点して学ふがよい。三体詩なとにも云てある如く色色の名が有てむつかしいことなれとも上手に成ては此のやうなことはいらぬ 初心の内のことぢゃ。上手は其中に自然にそなわっている、初めは能く守て破題では景に対し或は事を引て起り或は題に就て起す 破題とは題をせっぱすることぢゃ 次の頷聯では上の句を承て云ひ次の頸聯では転じ云ふ末の二句を結句と云題に就て結び或は前聯の意を〓す 兎角一へんの命脈のつゞくがよい 去りてから唯なにとなく平地をみるやうでよくない。其中には山もあり川もなければ風景が面白くない頷。聯では上を承て頸聯では転じて云たがよい
 排律は四句づつましてある 随分長いが十二句廿四句ぢゃ 排は行列を立並べた如くである 五言体から一体たてたもので さしきを作った如くさしきばかりではすまず かざりがなければならぬゆへ 色々の文字をつかふことぢゃ 中でたるむやうなことがある そこへむりに句を置いた分では前後のつり合がわるい 能くつりあいをあんじて作ることゆへ故事などを引用ゆることぢゃ すれば学問もなければならぬ 先づ四句づつ全篇のつり合をすることで長句と一意にして短う変ずるはよくない 是を合点すれば四六対などもかける 四六を書く筆でなければ排律は作られぬ 前にも云如く句からよりもつりあいが大切で字眼がある これにある皆どれも手本になるよい詩である。
(原文は片仮名。仮名遣い等、原文のままにあらず)

上田元周『和漢名数大全』袖珍本 嘉永二年 薄葉 和漢名数続編・和漢名数三編とも 300円

長橋間右衛門・大谷淳蔵『増補漢語字引大全』四切本 明治九年 300円

などなど。


硬いもの(ハードカバー)では、
梵字貴重資料集成』東京美術の解説篇のみが300円。


やはり百円コーナーへ行かないと落ち着かないので行く。岩波新書中公新書講談社現代新書などで、普段だったら買いたい本も眼に入るが、金が減り荷物が増えるので我慢して、普段眼にしないようなものに集中する。

  • 幸勉『改訂/語学検定模擬試験問題集』昭和十四年 大阪屋号書店発兌(印刷は大連)

華語日訳と日語華訳の問題集

語学検定試験規定抜粋(南満州鉄道株式会社)
本試験に依り試験すべき語学は日本人に対しては支那語又は露西亜語、支那人竝其の他の外国人に対しては日本語とす

吉沢義則監修・今小路覚瑞編纂『吉野拾遺』立命館出版部

などなど。