「○○時前○○分」のこと

昨日に続く
「○○時○○分前」の用例は山のようにあるので、いちいち挙げないが、古いところでは、
『明治ニュース事典』の、

間もなく二時十分前再び御馬を早められ、午後三時前染井町なる木戸従三位殿の邸へ臨御ありしに、

王子抄紙会社へ行幸明治9年4月15日 東京曙〕

ぐらいを見ていたが、探すと、

四時五十分ヨリ蒸気車ニ上リテ、六時十分前ニ里味破《リヴアプール》ノ旅館ニ帰ル

『米欧回覧実記』第二十七巻

というのがあった(近代デジタルライブラリー)。

別の言い方

「○○時に○○分前」

七時五十分を期し相共に試運轉を行ひて成績大に好し、八時に五分前第二發の號砲を合圖に磯部氏は直に飛行の準備に着手す

大阪朝日新聞付録 大正3年6月15日(『朝日新聞に見る日本の歩み 屈折のデモクラシー1』p152)

大正5.4.28七面(『屈折のデモクラシー2』p40)にも、「夕刊續報、二十七日午後三時に五分前」あり。

十二時に五分前だ。

もう四時に十五分前だぜ。

江戸川乱歩訳「魔の森の家」ISBN:4061952471

そっと時計を見ると十時に十五分前である。

甲賀三郎「支倉事件」

http://www.aozora.gr.jp/cards/000260/files/1430_27506.html

時計を見ると十二時に七分前です。

白雲齋樂山「講談モンテクリスト伯」『評判講談全集 第六巻』*

夜八時半に一分前だからもう飯は出せぬと支那料理屋「楽々」のボーイに言われる。

山本夏彦『生きている人死んだ人』文春文庫ISBN:4167352060


ほかにもあるが(石原慎太郎なども)、これぐらいで。

「○○時の○○分前」

朝は七時の十五分前と七時とに汽笛を吹く。

『職工事情』ISBN:4003810031 明治33年7月24日 鉄工某々談話

枕もとの夜光時計を見ると針は十二時の十五分前を示して居りました。

島尾敏雄「島の果て」ISBN:4480102329

「○○時より○○分前」

先ず自分の時計を検めると丁度午後の一時より五分前だ。

黒岩涙香「幽霊塔」

http://www.aozora.gr.jp/cards/000179/files/943_20712.html

ほかにもあり、ややニュアンスが異るか*1

「○○時が○○分前」

軒灯のうす明りに腕時計をかざしてみるとまだ十一時が二三分前である。

???

「五十九分前六時です。」

泉鏡花「化銀杏」

http://www.aozora.gr.jp/cards/000050/files/4264_23652.html

*1:「○○時まで、あと○○分」のような感じで。