半藤氏「漱石時代の新語」確認


漱石造語伝説だが、半藤氏のものは、『明治のことば辞典』だけで、漱石以前の用例がおおむね拾える。半藤氏は、『明治のことば辞典』に載っていると言うことが「新語である」と捉えたのであろう。


http://d.hatena.ne.jp/kuzan/20080424/1209051941
に掲げた語を、『明治のことば辞典』に載せる用例の古い順に並べると、

という具合。漱石と同時代の用例の出ている最後の4つについて注釈を加えよう。


「電力」の、漱石以前の用例については、
http://d.hatena.ne.jp/kuzan/20070106/1168086774
を御覧下さい。


「自由行動」で、今のところ見つけている古例は、太陽コーパスによる1901年09月(三四郎の7年前)の、

是殿下の自由行動を障る故也と


世界観も、太陽コーパスで1895年2月の例(野口寧齋)が。これは虞美人草の12年前。


生活難は、日本国語大辞典第2版により、

日本の下層社会(1899)〈横山源之助〉日本の社会運動・四「郵便電信料を引き上げ剰さへ各処に生活難の声高きにも拘らず、歳費増加を可決したり」

三四郎の9年前。初版では三四郎が古例だったが横山源之助の用例が見つかったわけである。

太陽コーパスを買いましょう

ともかく、明治期の用例探しに太陽コーパスが役に立つ、ということもお分かりいただけたのではないでしょうか。私は作った人間ではないのですが、お勧めします。

日本国語大辞典も買うか、オンラインの契約をするか、しましょう。

これを見ずして言葉の歴史を語るな、といいたい。